福祉避難所とHUG社会福祉施設バージョン
熊本地震から2年になりましたが、最近少しづつ福祉避難所のことが注目されるようになってきたように感じます。
福祉避難所については、避難所である小中学校の教室を福祉避難室とする、公的建物を福祉避難所にする、社会福祉施設と協定を結んでおいて福祉避難所とするというのが主な方法ですが、それ以前の問題としてそもそも行政職員や社会福祉施設職員の多くが福祉避難所についてよく知らないということがあります。そんなことがあるのかと思う方もいるかもしれませんが、これは本当のことです。
大地震が発生した場合、すべての避難者に一度避難所に避難してもらい、その後保健師等が避難所を巡回し福祉避難所に移送すべき避難者を選定し、選定された人が福祉避難所に移動するというのが現在の考え方です。
しかし、たとえば特別養護老人ホーム等にショートステイやデイサービスに通っている方、あるいは自宅で寝たきりの人や家族に、とにかく環境が劣悪ではあるが一度避難所である学校に避難することを求めたとして本当にそれが実現可能なのか大きな疑問が残ります。特に、デイサービスなどで普段から通っている施設があれば、まずそこに行きたくなるのではないでしょうか。
東日本大震災でも熊本地震でも、地震直後から社会福祉施設に多数の避難者が押し寄せたため、まずは避難者を受け入れ、その後福祉避難所に移行するという段階を踏んでいる施設が多数あったのが実情です。大地震の時は、丈夫な建物や公共性が高い施設には一般の避難者が押し寄せてくることがあるのです。
社会福祉施設では、一般的に地震に備えた避難訓練等は行われています。しかし、実際に災害が発生した場合は、もっともっと多くのことをしなければなりません。すぐに建物の被害を確認するとともに、入所者の安全を確保し、通所者や職員の安否確認を行い、それに加えて押し寄せた避難者や要配慮者を受け入れ、かつそこで発生する様々な出来事に対応することが求められます。
そこで、HUGの手法を活用して、社会福祉施設の職員が地震直後の入所者・通所者・職員の安否確認から、建物の被害状況の把握、避難者の受け入れ、福祉避難所への移行等を模擬体験でき、BCP的要素も加えた社会福祉施設バージョンを開発してきました。社会福祉施設関係者を対象に何回か試験実施と修正を繰り返してきましたが、最近になってほぼ完成したので、先日静岡県にHUGの使用許諾の申請をしたところです。
開発にあたっては、熊本地震の際、押し寄せた避難者の受け入れから福祉避難所の運営までを経験された益城町や西原村、御船町の社会福祉施設、広島豪雨時に福祉避難所になった施設等に聞き取り調査を行い、聞き取った内容を組込みました。また、東日本大震災時に福祉避難所になった施設の聞き取り内容も一部盛り込みました。
ほどなく許諾になる予定ですので、社会福祉施設の職員の皆さまにはぜひ一度体験していただければと存じます。