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2017年4月19日 (水)

HUGは地元や職場の災害対応に応用できる

 災害対応の特徴は、「同時多発」に対して「同時対応」しなければならないこと。つまり「同時多発・同時対応」です。


1 同時多発で何か起こるか

 同時多発が発生すると何が起こるかというと、需要に対して供給が不足する、つまり被害発生件数に対して対処能力が不足することになります。そして、このことが原因で混乱が発生します(この、混乱が発生するということがかなり重要なことです)。

 火災を例にとって考えてみると、1件の火災が発生した場合は消防車数台が駆けつけて直ちに消火することができますが、一度に50件の火災が発生したら手に負えなくなるのと同じことです。家屋倒壊でも土砂崩れでも、あるいは避難所開設でも、それが数件の場合は何とかなりますが、数十件になった場合は手に負えなくなります。こうなると、何から手をつけてよいかわからない状態になり、混乱が発生します。しかし、手に負えないからできないとギブアップするわけにはいきませんから、その時いる人達で全力を尽くして同時対応をしなければなりません。


1 国や県、市町村では、情報付与型あるいはロールプレイング式図上訓練といって、仮想の災害対策本部を設置して、大地震等が発生した場合に迅速に対応するための訓練を毎年のように実施していますが、この中では、地震の発生時刻、マグニチュードや震度、火災、津波、鉄道や高速道路被害、家屋倒壊、電気・ガス・水道・下水道などのライフラインの状況、孤立集落、土砂崩れ、国道や県道、河川の被害、港湾の被害、避難所の開設状況、病院、原子力発電所の状況、職員の参集状況など、多種多様で大量の情報が、災害対策本部に無線や電話、ファックス等で次々と報告されるという形で実施されています。


 これをHUGに当てはめてみると、カードが次から次に読み上げられて、どんな事情を抱えた人が来たか、どんな出来事が起きたか、その人をどこに配置するか、そのことにどう対応するか、その場所をどこにするか、それをどのように避難者に知らせるかなどの仕事量がプレイヤーの人数と処理能力をややえて混乱するのですが、それでも何とかしなければならないので、プレイヤー全員が協力してこの状況に対応していくということに当たります。


2 情報の処理、とりまとめ、共有

 それでは、この大量の情報と混乱の中で、何をどうして行けば良いのでしょうか。実は、災害対応の中で一番難しいのが、この情報の処理、とりまとめ、共有です。


2 行政機関が行っている訓練では、これらの大量情報を一度紙に書きとめ、それを項目別や一覧表で整理し、地図に記入し、並行して災害対応システムに入力して取りまとめていきます。

 このことをHUGに当てはめてみると、下記のように考えることができます。



  a 多種多様な避難者やイベントは多種多様で大量の被害情報

  b カードの読み上げは音声による情報共有

  c  読み上げられた情報を、書きとめ、掲示板に張り出すことは情報処理

  d  掲示板に張り出された情報を、項目別にまとめることは情報の取りまとめ

  e  敷地図や間取り図に空間利用を書き込むことは、視覚化による情報のとりまとめ

  f  避難者カードを体育館や教室に配置したものを俯瞰して見ることは、視覚化(地図化)による情報のとりまとめ


  上記の中では fが少しわかりにくいのですが、実際の避難所の風景として目に映るのは、様々な避難者が腰を下ろしている風景なのに対して、 ゲームの中では避難者カードを体育館に配置していくのですが、このことは別の表現をすれば、避難所運営本部の中で、誰がどこに腰を下ろしたのかがパッと見て分かるように、その場所を書き込んだ図面を作成していることと同じことなので、情報処理的な視点でみると、上記のように視覚化(地図化)による情報取りまとめと考えて良いのではないかと思います。

  なお、実際の避難所では受付で避難者の住所・氏名・年齢・連絡先・事情・特技などを聞いて避難者名簿を作るのですが、ゲームの中でそれをやってしまうと、その担当になった人は名簿作りばかりやることになり、あまり面白くなくなってしまうので名簿作りはあえてやらないようにしています。


3 対策立案と指示

 行政機関の訓練では、とりまとめた情報が幹部に報告され、方針が決定され、指示が出されていきます。

 このことをHUGに当てはめてみると、HUGでは2の「情報の処理、とりまとめ、共有」と、3の「対策立案と指示」を同時にやっているので分かりにくいのですが、 読み上げられた避難者カードやイベントカードの情報をプレイヤーの間で共有し、相談し、避難者の配置場所やイベントへの対処方法を検討・決定し、その結果を掲示板でお知らせする、この一連のことが行政機関の訓練で行っている対策立案と指示にあたります。


 以上のように、HUGでやっていることは、国や県、市町村が図上訓練でやっていることとほとんど同じです。しかも、混乱の度合いはHUGの方が高いと思います。

 実は、HUGはH(避難所)U(運営)G(ゲーム)であるとともに、H(本部)U(運営)G(ゲーム)でもあります。

 地元でも勤務先でも、災害が発生したら急いで安否確認をし、情報を収集してとりまとめ、対策を立案、実施することになりますが、HUGの経験があれば、知らないうちに上記1~3の災害対応の基本が身についているので、その場にいるメンバーで本部を作り、皆で相談しながら対応していくことが、きっとできると思います。


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