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2017年2月 9日 (木)

HUGを小学生がやる意味はあるか

 

 

 HUGは、開発から約10年経過しましたが、この間に口コミで全国に広がり、自主防災組織、自治会、教職員、中高生や大学生、ボランティア、お坊さん、研究者など色々な方々に実施していただけるようになりました。こうした中で、小中学生がHUG を実施する機会が次第に増えてきました。

 

 

 

 現在市販されているHUG(地震バージョン)は、基本的には大人用ですが、これまでの経験では中学2年生以上なら大人と同じようにできることが分かっています。ただ、小学校の高学年や中学1年生には少し難しいようです。

 

 

 

51  そもそも小学生がHUGをやることに意味があるのかということが時々話題になりますが、以下のように、十分意味があると考えています。

 

 

 

 まず、小学生が避難所を運営することはありませんが、避難所の多くは小学校に設置されるので、小学生はある意味当事者になるということがあります。自分が通う小学校にたくさんの避難者が押し寄せてくることがあるかもしれない、その時教室はどうなるのだろう、体育の授業はどうなるのだろう、自分たちはどうするのだろう、何かお手伝いが出来るのだろうかと、他人事でなく自分のこととして考えてみることに意味があると思います。

 

 

 

 昭和40年代くらいまでは、身近にお年寄りや障害のある人、病気の人などの姿があったと思いますが、医療や福祉サービスが充実し、核家族化が進展したこともあり、いつの間にかこのような人々を目にする機会が減ってきています。つまり、子供達はそのような人々が身近にいることそのものをよく知らないという事実があります。人間や社会を理解するという意味で、このような人々がいることを知らないことは致命的でもあります。さらに、教育制度も充実してきたため、自分と同じ子供の中に障害がある子供がいるということも知らないのではないでしょうか。

HUGでは、様々な事情を抱えた避難者が学校に避難してきますが、その中にはお年寄りや妊産婦、体や心に障害がある大人や子供、人工透析や心臓病の人など多くの要配慮者を設定してあります。したがって、HUGをやれば、まずは世の中には健康な人ばかりではなく、大変なことを抱えた人がたくさんいるということを理解していただけるのではないかと 思います。このような意味で、子供達の情操教育、いのちの教育に寄与できるのではないかと考えています。

 

 

 

 また最近、防災道徳という概念が広まりつつありますが、例えば避難所に避難者が100人いるが、おにぎりが50個しか届かなかったらどうやって分けたら良いのだろうか、あるいは目の不自由な人がトイレに行こうとして困っているとき自分には何ができるのか、大人達が炊き出しや物資の配付、 要配慮者への対応など、避難所運営でてんてこ舞いしている中で、自分に手伝えることはあるのだろうかなど、色々なことを子供たちに考えさせることも良いのではないかと思います。

 

 

 

 一方で、先生方は年々負担が大きくなってきており、新たに防災教育をしろと言われてもとても対応できないという現実もあるようです。教育関係者といろいろ話をしたことがありますが、授業をするには教材が必要だが、それを一から作るとなるとそう簡単にできることではないということです。つまり、やりたいことがあっても道具がないとそう簡単には取り組めないということです。 防災教育の素材、教材としては、防災かるた、防災すごろく、防災運動会、DIG、 クロスロードなどいろいろありますが、HUGも 素材の一つとして使っていただけるのではないかと思います。

 

 

  そうはいうものの、前述の通り現行のHUGは中学2年生以上からでないとうまくフィットしません。そこで外国人と一緒にやるために作成した「イラストふりがなバージョン 」なら小学生にも十分できるのではないかと考えています。

 

 イラストふりがなバージョンは、地震バージョンの内容を、外国人にもわかりやすくなるようにイラストにし、できるだけ難しい漢字や熟語などを使わず、文章もできるだけ短くし、複雑な事情は簡略化し、ふりがなも振るなどして、わかりやすい言葉(専門的にはやさしい日本語といいます)にしてあります。

 小学生にHUG をやってもらう意味はまだあります。

 子供の頃やったことは忘れないということもそうです。小学生の頃、火災訓練などで教室を飛び出し運動場に整列したことは誰でも覚えていると思います。授業で聞いたことは忘れても、体を動かして体験したことはなかなか忘れません。 HUGは模擬体験ですから、少なくとも授業で聞いたことよりは記憶に残ると思います。東日本大震災の前にHUGを体験していたので本番の時に役立ったという事例がいくつかあります。その関係者の何人かに話を聞きましたが、HUGをやった時はただ慌ただしくバタバタしていただけだったけれど、不思議と記憶には残ったので、地震の時に落ち着いて対応できたという感想が多く聞かれます。

 それから、防災教育を世代を通じて人材を養成するシステムとして考えた場合、できるだけ小さい頃から教育をしたいということがあります。大人用の教育素材は沢山ありますが、子供用となるとまだまだ限られているのが現状です。もちろん、今までも地震が起きた時の身の守り方や避難訓練などは実施してきていますが、小学生にも机上でできる訓練的なものはあまりやってきていないと思います。これは、おそらく良い素材がなかったことも一つの要因だと思いますが、机上でできることには実動にはないメリットもたくさんあります。

 

 DIGやクロスロード、HUGなどは 比較的簡単にできるものですから、ぜひやってみていただければと思います。





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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