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2017年1月14日 (土)

掲示板は非常に優れた情報共有手段(1)

 防災関係者の間では、災害発生時に情報共有をどうやったらうまくできるかということがしばしば話題になります。情報共有については、これまでいろいろ考えたり試してみましたが、掲示板こそが非常に優れた情報共有手段ではないかと考えています。

 理由はいくつかありますが、下記のとおりです。

1 誰でもやれる、人海戦術でできる

2 情報に場所が与えられる。

3 情報が確定され変化しない

4 重要な情報を目立つようにすることができる

5 情報の整理ができる

6 結果的に記録が残る

7 電子情報による情報共有の可能性


1 誰でもやれる、人海戦術でできる

 誰でもやれるということがまず一番重要なことです。

 災害が発生したときの特徴は同時多発ということです。 普段なら簡単に対応できるようなことでも、それが一度に多数の場所で同時多発すると対応できなくなる、それが災害発生時の特徴です。

しかも同時多発に対して同時対応することが求められます。同時多発に対して同時対応するためにはみんなで一斉に対応する、つまり人海戦術ということになるのですが、そうなると誰でも必ずできるということが非常に重要になってきます。

 最近はスマートフォンが普及してラインなどで情報共有が簡単に出来るようになりましたし、熊本地震などでは非常に役立ったという実例もあります。ですので、それならスマホの方がよほど便利で早いよという声が聞こえてきそうですが、そもそもスマートフォンを使える人の割合がどれくらいあるか、その中でラインなどを使える人がどれくらいいるかという問題があります。また、電源が確保されているかという問題もあります。

 これに対して、掲示板は紙に字を書くという行為ですから、紙と筆記用具さえあればできます。日本人で字が書けない人はほとんどいないわけですから、誰でも必ずできるという条件で考えてみると、最も有効な方法は情報を手書き文字にすることであり、それを上手に活用する方法としては掲示板として張り出すということではないかと思います

 海外の災害の映像などを見ても、尋ね人という形でたくさん張り紙がしてある風景が映し出されることがありますので、掲示板という方法は世界共通の情報共有手段というわけです 。


2 情報に場所が与えられる。

 大災害が発生した時は 多種多様で大量の情報が飛び交います。これらは基本的には音声情報として飛び交うのですが、音声情報は空気中に飛んでいってどこかに消えてしまいます。これに対して、それを文字にして掲示板に張り出すと、空中に飛んでいってしまう情報を固定化し、しかもそれに場所を与えることができます。

 場所を与えるということがどういうことかというとですが、音声情報の段階ではその情報はそれを知っている人にあるのですが、その人はいつも一定の場所に居るわけではなく、常に移動しているので、情報もその人と一緒にあちこちの場所に移動してしまいます。従って、ある情報をもう一度得ようとしたら、その情報を持っている人を探さなければなりません。しかしこれはとても大変なことです。その人が誰かに呼ばれてどこかに行ってしまうかもしれないし、眠たくなればその人は眠ってしまいます。その情報を得られる時間も限定されるということです。

 情報を掲示板に張り出した場合は、そのことを知りたくなったら掲示板のある場所に行けば良いし、そこに行けば必ずその情報を得ることができます。しかも、文字は人のように眠ったりしないので、時間に拘束されることはありません。24時間いつでも情報を得ることができます。

 なお、ここで重要なのは壁やホワイトボードなどに張り出すということです。せっかく情報を書き出しても、それをA4くらいの紙に書くと、すぐに誰かがどこかへ持って行ってしまいます。

 電子情報について考えてみましょう。電子情報はどこにあるかと言うと、その情報が書かれたホームページやアプリケーションソフトの中ということになります。ホームページで考えてみると分かりやすいと思いますが、ホームページにはいろいろな見出しが作られていて、それをクリックすると欲しい情報にたどり着くことができます。従って、情報の場所がどこにあるかと言うと、そのホームページの見出しのリンクの先ということになります。

 見出しの階層が二階層くらいならいいのですが、3階層、4階層となってくるとだんだん難しくなってきます 。さっき見た情報はどこにあったかなという時に、一階層目のあの見出しをクリックすると2階層目の画面が出てくるので、その中のこの見出しをクリック、そうすると3階層目が出てくるのでその中のこっちの見出しをクリックすると4階層目が出てくる。しかし、その4階層目の画面はかなり長い画面なので下の方に何回かスクロールすると、目的の情報があるということになります。

 仲間とその情報を見ながら何かを検討するという場合どうなるかと言うと、パソコンの画面やスマートフォンの画面は、同時にはせいぜい二人くらいしか見ることができないので、もし5人でその画面を見ながら何かを検討しようということになると、それぞれが「その画面どこだっけ」とカチカチとマウスをクリックしたり、スマートフォンを何回かタップしてその情報の場所を探しに行きますが、階層が深くなればなるほどそう簡単にその情報にたどり着けるわけでもないし、もしスクロールを何回もしなければいけないような画面だと、欲しい情報にたどり着くには、その近くまで行ってから、読みやすくするためにさらに上下に何回かスクロールするという作業が必要になってきます。つまり情報が確かにそこにあるにも関わらず、関係者の誰もがその情報にたどり着くために多くの時間を費やしてしまい、各人が見ている画面を並べてみて同じ画面かどうかを確認してから話をするわけでもないので、同じ画面を見ているはずだというやや不安定な心境で話をすることになります。

 これに対して掲示板の情報は、見たり触ったりできる3次元の通常の空間に固定されているので、電子情報のようにあちこち探す必要はありません、また、そこに書かれていることについて何人かで検討するという場合も、その掲示板の前に立てば確実に全員が同じものを見ているということを確認できるし、ホワイトボードを使って何かを検討する時のように、話題にしている場所を指差したり何かを書き加えて目立たせるなど基本的にどんなことでもできます。

 随分とまわりくどい書き方になりましたが、情報に場所が与えられているということは非常に重要なことだと思います。




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